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コロナ不況の特徴・事業譲渡による事業再生

コロナ不況の特徴・事業譲渡による事業再生

1 令和2年に入って、新型コロナの影響から、日本経済も大打撃を受けています。

2 事業種が偏っているのが特徴で、令和3年5月までの倒産で整理すると、飲食店(250件)、建設・工事業(140件)、ホテル・旅館(89件)、アパレル小売(76件)、食品卸(70件)と続きます(本稿における日付・数字のデータは、TDB『速報「新型コロナウィ ルス関連倒産」動向調査2021/5/26』によります。)。
 簡単に分析すると、飲食店は、緊急事態宣言・まん延防止等重点措置の直接的な影響を受け、それに伴う外出自粛要請から、ホテル・旅館、アパレル小売も大きな影響を受けています。そこから、取引先へと間接的に広がり、食品卸や中小・零細規模の工務店・電気工事業者が建設・工事業として倒産しています。最近では、テナントビルも苦しみだしているところもあるようです。
 しかも、通常の不況であれば、業種間でも強い弱いといった差がありますが、コロナ不況の場合は特定事業種の殆どが大きな影響を受けているのが特徴です。

3 ただ、国として、持続化給付金、納税猶予の特例、政策公庫のコロナ対策貸付・信用保証協会のセーフティーネット、雇用調整助成金といった制度を充実させたことから、倒産件数の増加は、当初それほどではありませんでした(令和2年2月26日の第1号倒産からから500件までは195日、1000件までは150日)。
 ところが、休業外出自粛要請が続いた結果、資金が尽きていくのか、1000件から1500件(令和3年5月26日)までの日数は110日と発生ペースが加速しだしてきています。最近(本稿アップ時の令和3年6月1日)では、休業要請の担保である休業要請支援金の給付も遅れていることから、更に当該事業種を圧迫させることになっている上、ワクチン接種が進んできているとはいえ、まだ先行きは不透明です。
 通常の不況であれば、融資不可→商取引サイトの伸長→税金保険料滞納→給与遅滞→倒産へと徐々に向かいますが、コロナ不況の場合は、急激な金融負債の増加→一気に倒産という形が散見されます。

4 以上が、コロナ不況の特徴ですが、要約すると、飲食を始めとする特定事業種の中でも強みはある(業種間での競争力がある)ものの、多額の金融負債を抱え(ただ、税金保険料・給与の遅れは少ない)、先行き不透明な中で、資金が尽きて倒産しようとしている会社が多いことになります。
 これを事業再生という視点から眺めた場合、いわゆる倒産初期症状の段階といえます(但し、金融負債は事業規模に比較し、格段に多いです。この状態が更に進んで税金保険料給与の遅れがでてくると、事業再生の大きな負担になります。例えば、民事再生であれば、これらは一般優先債権とされるので、カットの対象にならないからです。
 このような場合には、破産・事業譲渡型の手法を採らざるを得ませんが、後述する意味での事業譲渡とでは、その手段を採る目的が違っている点に注意する必要があります。)。従って、相応の資金を有するスポンサーの下で不透明な先行きを乗り越えることさえできれば、事業再生は有望ということになります。
 スポンサー型の再生手法といえば、株式譲渡(当該会社の株式の譲渡、狭義のM&Aといわれるものです。)や第三者割当増資(最近の例としては、旅行大手HIS、ロイヤルホスト等を経営するロイヤルHD、ワタベウェディングなど)がありますが、株式譲渡では金銭の遣り取りは新旧株主間でなされるだけで直ちに当該会社に資金提供はされません。ただ、第三者割当増資では直ちにスポンサーが100%株主となり当該会社の支配権を取得できません(その上、資本金として出資する以上、原則としてその返還を求めることはできず、本来ならスポンサーとしては、流動性の高い貸金としての資金提供を望むことが多いでしょう。)。ましてや、何れの手法も多額の金融負債の問題を解消するものではありません。
 その意味で、特に中小企業については、迅速に金融負債と当該事業を切り離しスポンサー会社に当該事業を譲渡した上で、先行きの不透明さをスポンサー資金により補い、当該事業の再生を図るという手法が有望視されているところです(「新型コロナと私的整理・法的整理」事業再生と債権管理172号11頁)。ちなみに、この場合に事業譲渡が注目されるのは、例えば民事再生では、再生債権確定その他で一定程度の日数を必要としますが、再生計画外での事業譲渡も許されるため、迅速性を図って事業価値の棄損を防ぐことができるからです(私的整理における事業譲渡・第二会社方式によれば、より迅速に事業価値の棄損を防げます。)。
 ただ、一般的にスポンサーは同業種であることが多いのですが、同事業種一斉不況というコロナ不況の特徴から、スポンサーを見つけるのが大変だという点は意識しておかなければなりません(特に令和2年度は財布の紐が締まり、市場が冷え込んでいるようでした。)。

5 そこで、村上新村法律事務所としては「事業再生・債務整理サイト」の開設企画の1つとして、大阪のHPにて、現在注目を浴びている「事業譲渡による事業再生」に関する連載をしようと思います。
 ご期待ください。

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