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私的整理後増収したことからモニタリングの中で節税策を採り一部繰上弁済をした事案

私的整理後増収したことからモニタリングの中で節税策を採り一部繰上弁済をした事案

1 会社等の状況

 今回ご紹介する事案は、建築業を営むA社に関するものです。A社の年商は5億円程でしたが、手形→現金という決済手段の変化により、運転資金が枯渇してきたというものです。金融機関は、1行のみだったので、支援協等は利用せず、相対での私的整理をすることにしました(私的整理の手法については https://m2-law.com/blog/1216/ )。

2 実態BSの作成

(1)私的整理をする際には、通常使用している簿価貸借対照表を実態に沿った貸借対照表(以下、実態BSといいます。)に修正し、A社の現状を把握しなければなりません。

(2)そこで、A社の実態BSを作成したところ、以下のとおり、114百万円の純資産マイナスになりました。

 
      簿価BS 修正  実態BS(百万円)
 流動資産     46.2 △ 9.1   37.1
 固定資産    399.1 △101.5  297.6
 繰延資産     9.1 △ 9.1   0
 資産合計    454.4 △119.7  334.7 
 流動負債     56.9   6.5   63.4
 固定負債    377.5   8.7  386.2
 負債合計     34.4   15.2  449.6 
 純資産合計    20.0 △134.9 △114.9 
 負債・純資産合計454.4 △119.7  334.7

3 計画案の作成

(1)その上で、経営改善計画案を作成することになりますが、中小企業について金融機関が納得する計画としては、3年内の黒字化、5年内の債務超過解消、計画終了年度における有利子負債の対CF比率が10倍以下といったものが求められます(支援協が求める再生計画案の規準参照 https://m2-law.com/blog/1427/ )。

(2)ただ、A社については、数年に及ぶ公共工事に関する仕事が多かったことから、売上が見込み易く、確実性もあり、経営改善計画案は、作り易かったです。そこで、DDS・債権放棄といった大掛かりな金融支援を求めるまでもなく、リスケという形で経営改善計画案を作成することができました(私的整理における金融支援の方法については https://m2-law.com/blog/1343 )。

4 モニタリング

(1)その後、半年に一度のモニタリングが実施されましたが、計画通りに進行し、1年過ぎた頃には税務対策が必要なまでに至りました。そこで、不動産を取引上友好な関係にあるB社に売却し、BSに赤字計上しました(+△8300万円)。それによる節税効果により資金余裕も増えました。

(2)経営改善計画案の了承を金融機関から得た際には「資金に余裕ができれば全額繰上償還する」といったコベナンツはなかったので、売却代金のみを繰上弁済に充てその余は運転資金として保持した上で、当初の計画どおりの弁済をすることにしました。なお、B社の購入資金についても当該金融機関が融資を実行、A社に対する根抵当を抹消し、B社の抵当権を設定しました。金融機関としても、財務状態の悪化していたA社からの資金を回収し、財務状態の良いB社に貸付できるということで、理想的な私的整理でした。

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