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ガイドラインに基づく保証解除

ガイドラインに基づく保証解除

【1】「経営者保証に関するガイドライン」とは、どのようなものですか?

 中小企業に対する融資の際、会社代表者の保証がされることが多いですが、経営者が自ら保証していることで、思い切った事業展開ができなかったり、保証後に経営が傾いてきた場合に早期の事業再生への決断を阻害するといった側面がありました。
 そこで「経営者保証に関するガイドライン」が発行されました(以下、GLといいます。)。GLの概要は、①保証契約時等の対応(融資の際に保証を求めないこと等)と②保証債務の整理手続の2つですが、このHPでは②について解説します。

【2】保証債務の整理手続を利用できるのは、どのような場合ですか?

GL第7項(1)は、以下の要件を定めています。

(1)GL対象の保証契約であること

① 主債務者が中小企業であること

 

② 保証人が個人であり、中小企業の経営者であること

 ⇒ GLによる保証債務整理手続は、早期の事業再生を阻害しない等のために認められたもので、事業再生を決断できる経営者(代表)が原則的な対象者となります(例外的な場合として、GL第3項(2)①、②、脚注5参照)。

③ 主債務者・保証人が弁済に誠実で、財産状況等を適時適切に開示していること

 ⇒ 債務不履行だけでは「弁済に誠実でない」とはいえません。
  偏波弁済(特定の債権者のみに対する支払)があった場合等に、これにあたるかが検討されます。
 ⇒ 粉飾的な経理処理があったからといって、一律に「不適切開示になる」とはいえません。

④ 主債務者・保証人が反社でなくそのおそれもないこと(以上、GL第3項)

(2)主債務者の

法的債務整理手続(破産・民事再生等)
準則型私的整理手続(中小企業再生支援協議会による再生支援スキーム、特定調停等)の申立てと同時、又は手続係属中、若しくは終結後に、GLを利用すること

(3)対象債権者にとっても経済的な合理性が期待できること

(4)保証人に破産の免責不許可事由のないこと(破産免責を受けてから7年内の免責申立ては免責不許可事由ですが、この点は排除されています。)

【3】保証債務の整理の際、一定額の資産を残せるのは何故ですか?

 GⅬでは、破産手続における自由財産(99万円)に加え「一定期間の生計費に相当する額」や「華美でない自宅等」を、インセンティブ資産として、残存資産にすることが可能な場合があります(GL7(3)③)。
 このような制度を備えることで、保証人である経営者に私的整理等を行う動機付けをして、保証人の再チャレンジを促すためです。
 

【4】保証債務が整理されたら、どうなりますか?

(1)保証債務整理後は「表明保証した資力が事実に反した場合は追加弁済する」旨の契約を書面で締結する等すれば、残存保証債務は解除されます(GL7(3)⑤ニ参照)。

(2)GLによる債務整理を情報は信用情報登録機関に報告、登録しないこととされていて、個人たる保証人にとっては重要なメリットといえます(GL8(5))。

【5】「GLの沿革」について、教えてください

 かつての金融実務では、中小企業に対する融資の際、債権の保全、経営者に対する返済意欲の向上、返済能力の補完の観点から、会社の代表者や実質的経営者による連帯保証がなされていることが多かったです。
 ただ、経営者が自ら保証を行っていることで、思い切った事業展開ができず、あるいは、保証後に経営が傾いてきた場合に早期の事業再生への決断を阻害するといった側面もありました。
 このような事態に対処し、経営者保証に依存しない融資の一層の促進のため、日本商工会議所と一般社団法人全国銀行協会を事務局とする経営者保証に関するガイドライン研究会より、「経営者保証に関するガイドライン」が発行されました(以下、GLといいます。)。
 したがって、今後の中小企業における経営者保証に関してはGLに従った運用がされることが期待されます。

【6】中小企業再生支援協議会とは、どのようなところですか?

中小企業再生支援協議会とは

 中小企業再生支援協議会(以下、支援協という。)とは、中小企業に対する再生計画策定支援等の再生支援事業を実施するため、産業活力強化法に基づき商工会議所等に設置される組織です。現在、b全国47都道府県に1カ所ずつ設置され事業再生の専門家(弁護士、公認会計士、税理士、金融機関出身者など。)が常駐、日頃から中小企業者からの相談を受け付けています。GLによる保証債務整理手続は、支援協のする私的整理や破産手続と平行して進められることが多いです。

第一次対応

1 支援協の活動は、中小企業者(以下、当該企業という。)の申出を受け、企業内容の実体を把握しながら、事業再生に向けた相談に対し適切な助言等をする窓口対応から始まり、これを第一次対応といいます。

2 企業概要や3期分の税務申告書等を持参するのが通常で、併せて、現状に至るまでの経緯説明を1枚程度のメモに纏めていくと効率的な相談等が可能になります。

 そこでのヒアリングの上、支援協を通じた再生支援の必要性と可能性が窺えるなら、当該企業の承諾を得て、次の第二次対応に移ります。その際、主要債権者(メインバンク)の意向確認が必要なので、注意が必要です(中小企業再生支援協事業実施基本要領〈以下、要領といいます。〉6(2)①②)。

 第二次対応

(1)当該企業の再生計画の策定支援をするのが、第二次対応です。支援協では、個別支援チームが編成されます。

   この段階で支払が継続されている場合には、債権額を確定等するため支援協と当該企業の連名で取引金融機関に対し一時停止の文書が送られます。事業再生ADRでは、一時停止をする前の段階で、既にDDが実施され再生計画案の概要が作成されますが、支援協ではその後にDDをすることが予定されています。それは、支援協の対象が中小企業者であり独自で専門家を見つけ出し依頼することは難しく、支援協が関与する前の段階でそこまで求めることは酷であろうと考えられたためです。

(2)再生計画の内容は要領で決まっており、事業財務状況の見通しをたてなければなりません(6(5)①)。

迅速かつ簡易な再生計画の策定支援でない限り、外部専門家(公認会計士、税理士、中小企業診断士等)を含む個別支援チームが編成されますが、当該企業が実施したBS・PL等の財務DDと事業DDで状況把握可能なら、外部専門家等がそれを検証する形で、再生計画案の作成支援がなされます(要領6(3)①、(4)④)。

(3)このようにして支援策定された再生計画案について、支援協は、その内容・実行可能性・金融支援の必要性・合理性等に関する調査報告書を作成します(要領6(6))。

以上を元に債権者会議等により全金融機関の合意が得られれば、再生計画は成立します(要領6(7))。

モニタリング

  第二次対応により成立した再生計画について、当該企業の決算期も考慮しながら必要な時期を定め、その達成状況等を監督していきます。その期間は、概ね3事業年度とされていて、その間必要性が生じれば再生計画の変更にも支援協力していくことになります(要領8)。

【7】残存資産の具体的内容について教えてください

GLの考え方

  GⅬででは、金融機関等の対象債権者は、保証人の手許に残すことができる残存資産の決定に際し、保証人の履行能力、保証人の経営責任や信頼性、破産手続の自由財産の考え方との整合性等を総合的に勘案すべき、とされています。
 従って、債権者としては、自由財産(99万円)に加え、保証人の要請を受け、回収見込額の増加額を上限として経営者の安定した事業継続、事業清算後の新たな事業の開始等のため「一定期間の生計費に相当する額」や「華美でない自宅等」といったインセンティブ資産を残存資産とすることが可能な場合があります。そのため、破産手続以上に残存資産が増加する可能性があります(GL第7項(3)③)。
 このように、破産における自由財産よりも残存資産が増加する可能性を制度として備えることで、保証人たる経営者に対して私的整理を行うインセンティブを与え、保証人の再チャレンジを促すことに本制度の意義があります。

一定期間の生活費に相当する額

 GLにおける、生計費の「一定期間」とは、雇用保険の給付期間(90~330日)の考え方を参考にするとされていて「生計費」については「標準的な世帯の必要性経費」として民事執行法施行令で定める額(33万円)を参考にするとされています。 雇用保険の給付期間は、保証人の年齢により異なりますが、保証人が45歳以上60歳未満であれば最大で330日が給付期間なので、自由財産に加えて約360万円の金額を残存できる可能性があります。

華美でない自宅

 華美でない自宅については、一義的に明確な定義はなく難しいところですが、評価額、地域制、築年数、面積・外観、同居人の人数・扶養家族・要介護者の有無といった要素を考慮して判断され、実例的には、1000万円から2000万円弱のものが多いようです。
 GL4項の条文の説明で記載しております。

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